リムを駆動してエレベーターに乗り込み、

ようやく地上に出る。

東京には本当の空がないとか、

そんなことはきっと嘘だ。

わたしにとって見上げる雲は頭上遥か彼方。

動かない身体は不便だけど、

毎日のラッシュは堪えるけれど。

わたしを必要としてくれる東京の街に、

空にわたしの希望は、

確実に存在している。

地下鉄の駅を背に、

わたしの職場はあと百五十メートル先。

車椅子がんばれ。

仕事に向かうわたしの心のなかに、

晴れた空も応援してくれている。

 

 

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前田穂花

(2015年度メトロ文学館入選作品)